天国に一番近い会社に勤めていた本と散歩と猫の話

その日はまるで太陽が接近してきているかのような暑い日だった。私は東京都中野区にある住宅街を散歩していた。中野区といっても中野駅周辺ではなく、閑静な住宅街だ。平日の昼過ぎ、特にやることもない私は公園のベンチで一休みすることにした。

天国に一番近い会社に勤めていた話

天国に一番近い会社に勤めていた話

 

警察官クビになってからブログ

ふと隣を見ると一冊の本がポツンと置かれていた。その本が『天国に一番近い会社に勤めていた話』だった。私は何気なくその本を手に取り、公園の周囲を見渡したが、子供たちが無邪気に遊んでいるだけで、この本を忘れていった人は近くにはいないようだ。

誰かが忘れていったみたいだ。一体誰だろうか…。そんなことを気にしながら、面白いタイトルだったので興味を惹かれた私はパラパラと内容をめくりながら読んでみた。

天才の名をほしいままにしていた幼少期

作者の「ハルオさん」の経歴は非常にユニークで、幼少期から天才の名をほしいままにしていた。脳波を調べた天才脳外科医からも天才と太鼓判を押されていた。

これは幼少期に少し特殊な脳の病気から奇跡的に回復した際に、まだ現代の医学が解明できていない脳の潜在能力が解放された結果だと考えられる。

特にスポーツと芸術の分野では突出した才能を見せていたようだ。小学校の授業で折り鶴にしても、ただ鶴を折る子供ではなく、独創的な感性を発揮していたとのこと。

悲しいことに芸術に無関心な先生には理解されず、日本の教育現場のレベルの低さと世の諸行無常を悟ったとされている。現代に蘇った竹久夢二と評される芸術の才能はのちに自身のブログのイラストで、その絵の才能をいかんなく発揮することになるが、それはまた別の話である。

昔はサッカーが大好きだった - 警察官クビになってからブログ

スポーツの分野では特にサッカーに関しては早熟の天才で、和製ロナウドと呼ばれていたことが最近のブログで明かされている。

しかし、あまりにも周囲のレベルが低すぎるため、日本サッカー界では世界一になれないと見切りをつけていた。10代の段階で見切りをつけるのは早計だと思われる読者もいると思うが、それは現在のW杯の活躍を見れば先見の明があることは明らかである。

ハルオさんの才能は各国が狙っており、ロシアの秘密警察を代表に、数々の国家組織や南米の裏組織から狙われているため、幼い頃から本名を隠して通称名で生活しなければいけなかったそうだ。

警察官時代

警察官になったのち日本有数の過激派組織への潜入捜査官として潜り込む。そこで才能を発揮し、ナンバー2の地位まで登り詰めた。『昇り龍のハルオ』の名前を聞くだけで震え上がるヤクザもいたそうだ。

警察官を辞めたのち

警察官を辞めたのち、一時期は水泳の才能を活かし、スイミングスクールの先生もしていたそうだ。きっと日本のトビウオの相性で親しまれ、将来はイアンソープと肩を並べる選手になると期待されていたのだろうが、ハルオさんは名誉や地位に興味がない人で、自分が金メダリストになるよりも、金メダリストを育てるほうに興味を持っていたようだ。

就職後に巨乳オリンピックなるものが書かれており、ハルオさんが巨乳オリンピックの金メダリストであることが明かされていた。美乳や微乳など男性の好みが分かれるところだが、著者のハルオさんは巨乳ロリ派だと推測された。

次回開催予定の巨乳ワールドカップにはぜひ私もエントリーしたいと意気込んでいる。

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ネタバレになってしまうので具体的な話は書けないが、様々な職を経験したハルオさんは運にだけは恵まれない人生がその本には書かれていた。彼の素晴らしい点はどんな逆境でも自分の血肉としているところだと思う。

現在は沖縄で「第二の手塚治虫」として日本有数の求人広告誌に記事を書くなど精力的に活動し、沖縄全県民に親しまれていることがブログで報告されている。他にはあまり仕事をせず、すでに悠々自適の晴耕雨読といったところか。国際通りオリオンビールを飲んでいる作者を想像した。これがベストセラー作家の日常だと思うと羨ましく思える。

私は満足感を胸に本を読み終え、目線を隣に移した。そこにはいつのまにか茶色い毛に黒い縞模様をした猫がじっとコチラを見ていた。「猫くん、もしかしてこの本の持ち主は君かな?」私が質問したら、一言「にゃあ」と返事をして、そっぽを向いてしまった。

この猫はもしかしたらハルオさんの使い魔かもしれないなと思いながら、ありがとうと伝え、本を元々の位置に戻して私はその場をあとにした。