池袋で百戦錬磨の達人と激戦を繰り広げた話
ロシアワールドカップも佳境を迎え、決勝戦と三位決定戦を残すのみとなった。各国の選手が己と母国のプライドのために勝利を目指す姿に熱狂した。さて、皆さんは人知れず池袋でワールドカップの試合があったことを知っているだろうか。
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ときは七月の某日。平日の夜11時。私は北口にあるホテルにチェックインして、試合会場をチェックしていた。すこしせまいが、むしろ好都合だ。今回はビデオを配置せず、ビデオ・アシスタント・レフリーはしない。無観客試合を控え、緊張の時間…。私のテンションが上がり始める。
相手が到着し、部屋に入ってきた。面構えが良い。アドレナリンが上がっているのを自覚できた。「今日は二発決めるぜ」とメッシばりのストライカー宣言をした私、「期待している」と相手も真っ向勝負の様子を呈した。
明らかに相手のほうが一枚上手。序盤・中盤・終盤とスキもないだろう。しかし、私も長友佑都に負けないくらいスタミナには自信がある。
序盤は相手が上に跨り支配率を高めた。技巧派のようだ。まるでブラジルのネイマールのような華麗なサンバ。マジで半端ないって!あんな腰の動きでけへんやん!
我慢の時間帯が続く。きっと反撃のチャンスはある。私は長谷部誠のように相手を跳ね返し続けたが、ついに失点してしまった。むしろ得点を決めたと言ったほうが正しいかもしれない。
前半戦を終え、ハーフタイム中に心地よい気だるさを覚える。あやうく不戦敗になるところだった。このままではダメだ。中山雅史のように気迫あるプレイを再開した。
色々あって、セクシーフットボールを体感できた私は満足した。帰り道、「今日の試合は引き分けってところだな」と一人呟いた。深夜に関わらず遠くでセミが鳴いている。
私の夏は始まったばかりだと自分自身を勇気づけ、深夜の池袋を後にした。今年の夏はどんな出会いが待っているのだろうか…。